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現代日本画壇の主軸として活躍する日本画家・平松礼二の作品を常設展示。3ヵ月後ごとにテーマを設け、企画展を開催しています。
「路・とおり雨(ジヴェルニー)」(左隻)
日本画家・平松礼二がこれまでにたどってきた道のりを振り返り、当館に収蔵された作品によって画業を紹介するシリーズです。これまで、年代を追いながら年1回のペースで企画展を開催してきました。シリーズ最後となる今年度は、平松画伯のライフワークである「ジャポニスムシリーズ」をテーマといたします。
平松画伯が印象派の研究をするきっかけとなったのは、1994年にパリで開かれた自身の個展でした。西洋画中心の日本の美術教育に反発し、50歳にして初めてフランスの地を訪れた画伯は、モネの睡蓮の大作に衝撃を受け、ジャポニスムの源流を求めて、印象派ゆかりの地を取材する旅を始めました。1998年にその成果は、巡回展「印象派・ジャポニスムへの旅」として発表され、以後、今日に至るまで約30年にわたって描き続けられています。
2021年には、フランスと日本の文化交流に貢献したことが認められ、フランス共和国芸術文化勲章(シュバリエ)を受章しています。国際的にも高い評価を得ている「ジャポニスムシリーズ」の初期から現在までの作品を展観します。
「ノルマンディに桔梗が咲くと」
「雲映る池」
画家は、様々な画材や技法を駆使して、心が動いたことや伝えたいことを作品として表現します。絵画の表現は主観的なものであり、画家の個性が反映されて作品となります。
「日本画は、実際の風景を借りてイメージや夢を表現」することと述べているように、平松画伯の作品制作では、現実の風景を写したスケッチを元に、自身のイメージを形にするため構想し、画面を再構築していく過程を経て完成します。実際の風景とは違う心象風景として出来上がった作品には、画家の思いや夢が詰まっています。
今回の展示では、異なる季節が同じ画面に描かれているものや、画面いっぱいに花で装飾された作品など、自由な発想や遊び心を織り込んだ作品を展示します。平松画伯の「イメージの宇宙」をお楽しみください。
秋天
睡蓮・ジャポニスム
現在 無所属
パリの郊外にあるジベルニー村には、印象派を代表する画家、クロード・モネが晩年を過ごしたアトリエがあります。日本風の庭園の池には、モネが絵の題材にした睡蓮が咲き、世界中の美術ファンに知られています。
平松礼二画伯は、モネが愛したジャポニスムを検証するため、ジベルニー村を四季折々に訪ね、睡蓮を描き続けました。日本画家の眼を通して見た光景は「印象派・ジャポニスムへの旅」シリーズに結実しています。
のちに画伯は、モネ財団から友情の証として「モネの睡蓮の株」を譲られました。この貴重な睡蓮は、平成18年10月町立湯河原美術館に平松礼二館が開館したことを記念して当館に株分けされ、庭園の池で育成されています。
開花時期は年によって変わりますが、6月~8月頃になります。
※当館には、モネの作品はありません。