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今年の夏は私がここポートスティーブンスに住み始めてから一番暑い夏でした。
オーストラリア全土で記録的な猛暑が続き、内陸部では40度越えする日が続いたようです。ここポートスティーブンスでも気温が40度近くまでになる日が数日ありました。海岸線に位置するので、海風で体感温度が下がるのはありがたかったですね。
しかし、高温、乾燥、強風が重なると山火事が起こりやすくなります。ここオーストラリアでは”Total Fire Band”と言って、気温が高く、乾燥し、強い風が吹く予報が出された日には地区ごとに政府から外では焚き火、BBQ、キャンプファイヤーなどの野外での火を使うアクティビティーが禁止される命令が出ます。乾燥して、風が強い環境だとちょっとした火事が大きな山火事に発展してしまう可能性が高いからです。
今年の夏はここポートスティーブンスだけでも3件の大きな山火事が起きました。1件目はSalt Ashでおよそ2000ヘクターの敷地が火事で焼かれてしまい、主要道路も封鎖されました。幾つかの倉庫が全焼したり、何台か車が燃えてしまったようでしたが、幸運にも怪我人、死人は出なかったようです。勇敢にもこの地区の住人たちは自分でホースやバケツを使って自分の家の周りの消火活動に励んでいたそうです。
2件目は絶景スポットとしても有名なTomaree半島の山、自然保護区域で火事がありました。この件は放火が原因でないかと言われています。一晩中燃え続けたTomaree山はまるで火山から溶岩が流れてるかのように赤く光って、遠くからでもその炎と煙が見ることができるほどでした。ヘリコプターでの消火活動で翌日には鎮火されました。
3件目はSalamander Bayという町でポートスティーブンで唯一のショッピングセンターの近くで火事が始まりました。この土地はポートスティーブンのコアラたちにとって重要な生息地であるMombo保安湿地帯が広がっているのですが、その湿地帯のやぶが8ヘクターほど燃えてしまいました。消防隊も消火するにもその沼地に生えたやぶの奥になかなか入れず、消火するのに苦労したようです。このMombo湿地帯の40パーセントがコアラの重要な生息地となっているので、アニマルレスキュー団体も火事現場へコアラの救助に向かいました。この火事から逃げきれなかったコアラも多かったのではないかと言われていますが、幸運にもレスキューされたコアラの一頭は順調に火傷も少しづつ治りレスキューセンターで復活しているそうです。
このように山火事はあまり環境に良い印象ではありませんが、オーストラリアの植物には火事によって発芽するする植物が生息します。その代表がBankisia、バンキシアという木です。この木の花は独特ですぐに見分けがつきます。その花が茶色くなる頃には木のような硬い表皮に包まれた種を持ちます。そして、この種は火事のような高温の環境にさらされると種が飛び出し、そこから新しい芽が出るのです。このように山火事に順応された独特な植物がオーストラリアに存在します。オ
ーストラリアの環境上、山火事は自然環境が循環していく過程の一部にもなっているようです。
2019年2月末 執筆
2019年03月08日 17時17分