ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
現在地 トップページ > 海外駐在員レポート > 2024年7月7日(日)ポートスティーブンス市レポート(人間が自然界へ与える影響)

本文

2024年7月7日(日)ポートスティーブンス市レポート(人間が自然界へ与える影響)

ページID:0023067 更新日:2024年7月16日更新 印刷ページ表示

ポートスティーブンス市レポート(人間が自然界へ与える影響)

湯河原町の皆さん、こんにちは。

先月中旬、ポートスティーブンス市では、滅多にお目にかかることのない動物が突如ビーチに現れ、大騒ぎとなりました。その動物とは、アシカ。正式名称は、オーストラリアオットセイ(学名: Arctocephalus pusillus doriferus)です。英語では、“Australian Fur Seal” と呼ばれることもあります。

オーストラリアオットセイは、オーストラリア南部の海岸に生息する海洋哺乳類です。主に南オーストラリア州、タスマニア州、ビクトリア州の沿岸に生息していると言われており、ポートスティーブンスのビーチで観られることは、とても珍しいのです。体長は、雄が約2.2~2.5m、雌が約1.2~1.8mほどで、毛皮は灰褐色をしています。アシカの特徴的な行動として、岩場や砂浜で日光浴をすることがよく観察されています。

アシカ1 アシカ2

ショールベイビーチに現れたアシカ

 

近年、オーストラリアオットセイの分布範囲が北上して来ており、特に冬季(6月〜8月頃)は、多くのアシカがニューサウスウェールズ州の沿岸でも観察される傾向にあります。その理由は、南方の繁殖地から北上。また、餌を求めて移動する若い個体によるものと思われます。アシカの繁殖期は、11月から1月。かつて、乱獲によりアシカの個体数が激減しました。現在は、保護活動により回復傾向にはありますが、依然として様々な脅威に直面しています。

今回、アシカがショールベイに現れたことは、地元の住民たちも驚きました。なぜ1匹だけ?群れからはぐれた等、色々な憶測が走りましたが、現場に来ていたORRCA (Organization for the Rescue and Research of Cetaceans in Australia) 海洋哺乳類レスキューの方が考えられる理由を説明してくれました。このアシカは、怪我をしてビーチに流れ着いたのではないか?ということ。その怪我の状況から、原因はボートのプロペラに巻き込まれたのではないか、と推測されています。サメなどに噛まれた跡とは違い、複数の切り傷が身体のあちこちに痛々しく見られ、とても可哀想でした。

ポートスティーブンスは海沿いの街なので、多くの船が行き交うのは当然なのですが、それが自然界の生き物へ良くない影響を与えているという事実を目の当たりにした、というのが率直な感想です。このアシカは、無事に群れへ戻ることが出来たのだろうか?そんなことを考えると胸が痛みます。

複数の傷を負ったアシカの姿

複数の傷を負ったアシカの姿

急遽、設置された注意事項のサイン

急遽、設置された注意事項のサイン

 

自然界で起こる現象は仕方ないことですが、人間が自然界へ与える影響により、海洋生物も毎年減少していると考えると、私たちが危機感を持たなければいけないと改めて思いました。

人間と自然保護のバランスを取るためには、ボートやジェットスキーの速度制限域や海洋保護区の拡大など、解決策を模索していく必要があります。海洋汚染や気候変動など、まずは、一人一人が環境に配慮した行動を心がけ、協力し合うことで、人間と野生生物が共生できる社会を目指すことが重要、そして今後の課題だと考えます。